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Cell · 2024年9月 · 第1相の初回報告 · 1名 · 中国

1型糖尿病の患者1名がインスリン注射なしで1年 本人の細胞から作った膵島を腹部に移植

1型糖尿病の患者1名に、本人の細胞から作った膵島(インスリンを出す細胞の集まり)を腹部の筋膜の下へ移植した試験の初回報告が、2024年9月に Cell 誌に掲載されました。移植から75日後にインスリン注射が不要になり、1年後まで血糖が目標範囲内にある時間は98%を超えました。ただし1名の報告で、この患者は別の理由で免疫抑制剤を使っていました。

この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

何が起きた?

1型糖尿病では、免疫の異常によって膵臓のインスリンを出す細胞が壊され、生涯にわたるインスリン注射が必要になります。今回の研究では、患者本人の細胞をいったん「どの細胞にもなれる状態」へ戻し、そこからインスリンを出す細胞の集まり(膵島)を作って、腹部の筋膜の下に移植しました。

移植から75日後、患者はインスリン注射をやめることができ、1年後もその状態が続きました。血糖値が目標範囲内にある時間の割合は、移植前の43%から4か月後には96%へ上がり、その後は98%を超えています。長期的な血糖の指標であるHbA1cも、糖尿病でない人の水準まで下がりました。1年時点で、移植に関わる異常は見つかっていません。

「化学的に作った多能性幹細胞」とは

iPS細胞は通常、細胞に数種類の遺伝子を導入して作ります。この研究チームは、遺伝子を入れる代わりに低分子化合物の組み合わせで細胞を初期化する方法を開発し、化学的に誘導した多能性幹細胞(CiPSC)と呼んでいます。本人の細胞から作るため、他人の細胞を使う場合の拒絶反応を避けられると期待されています。膵島を肝臓の血管ではなく腹部の筋膜の下に置いたのは、画像で観察しやすく、必要なら取り出せる場所を選んだためです。

「目標範囲内98%」をどう読む?

1名

この報告で結果が示された患者の人数
第1相試験の初回報告で、症例報告に近い位置づけです。

血糖が目標範囲内にある時間の割合は、1型糖尿病の治療で重視される指標で、一般に70%以上が目標とされます。98%という数値は、健康な人に近い血糖の推移を意味します。ただし、この結果は1名のものです。また、この患者は以前に肝移植を受けていて免疫抑制剤を使っていたと報じられています。1型糖尿病の本質である「自分の免疫が膵島を攻撃する」問題を、この治療が解決できるかどうかは、免疫抑制剤を使っていない患者での結果を待つ必要があります。

まだ分からないこと

  • 1名の結果です。 他の患者で再現されるかは分かりません。
  • 免疫抑制剤を使っている患者です。 自己免疫による膵島の破壊が起きないかは判断できません。
  • 追跡は1年です。 移植した膵島がどれだけ長く働くか、長期の安全性はこれからです。
  • 本人の細胞から作る自家移植です。 患者ごとに細胞を作る必要があり、費用と時間の面で広く使える方法になるかは別の課題です。

研究情報

掲載誌
Cell(オンライン公開 2024年9月25日、2024年10月31日号)
試験デザイン
第1相、初のヒト試験の1名についての1年時点の予備解析。中国(天津)
登録番号
ChiCTR2300072200 ↗
対象
1型糖尿病の患者 1名(海外報道によれば25歳の女性)
介入
本人の細胞を低分子化合物で初期化した多能性幹細胞(CiPSC)から膵島を作製し、腹部前面の筋膜(腹直筋鞘)の下へ自家移植
主要評価項目
実施可能性と安全性。1年時点で全ての評価項目を達成と報告
結果
移植75日後からインスリン注射が不要。血糖が目標範囲内にある時間は移植前 43.18% → 4か月後 96.21%、その後 98%超で安定。HbA1c は約5%(糖尿病でない水準)
有害事象
1年時点で移植に関わる異常の所見なし
免疫抑制
この患者は以前に肝移植を受けており、免疫抑制剤を使用中(海外報道より)。自己免疫による膵島の破壊が起きないかは、この1名では判断できません
資金・利益相反
著者に杭州 Reprogenix Bioscience 社の科学顧問・社員・元社員が含まれ、関連する特許出願あり(論文の開示より)
注意
1名の症例報告に相当する初回報告です。第1相試験は続いており、他の参加者の結果は今後の報告を待つ必要があります

結果の範囲

この結果が示していること

  • 本人の細胞を化学的に初期化して作った多能性幹細胞から膵島を作り、1型糖尿病の患者1名へ自家移植した初のヒト試験の1年時点の報告であること
  • 移植75日後からインスリン注射が不要となり、1年後まで血糖の目標範囲内の時間が98%を超えたこと
  • 1年時点で移植に関わる異常の所見がなかったこと

この結果が示していないこと

  • この治療で1型糖尿病が治ること(1名の初回報告です)
  • 免疫抑制剤を使わずに同じ結果が得られること
  • 他の幹細胞治療や、点滴による細胞治療に同じ結果が当てはまること
出典
この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

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